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FF14の不具合対応とその報告から見る、ゲームの失敗事例共有について

主に、2018年3月13日にFF14の公式フォーラムに投稿された、吉田P/Dの長文がすごかったので補足を入れつつ共有したいという話です。 投稿内容はとあるバグについての詳細・経緯・現在状況などです。

アンガーマックスを利用した高難易度レイド攻略について

以下、個人的な感想と、他ゲームの不具合対応とその報告の事例紹介などが主になりますが、FF14の公式フォーラムに投稿された文章(以下投稿文)にゲームの固有名詞などが多いので補足を入れる時必要であれば引用などしていきます。

冒頭部分: 猿でもわかる箇条書き形式で時系列順に顛末が記載されています。 「パッチ4.1」は2017年10月10日に日欧米で実装されており、この時から当該バグが残されたままでした。 なお、「冒険者小隊コンテンツ」自体はパッチ4.1以前からあるコンテンツで、そのコンテンツに対して専用のリミットブレイク(大技)が追加された形となります。

このバグに気付いたプレイヤーがUMを小隊コンテンツ外で「意図的」に使用する

この"小隊コンテンツ外"というのは、同じくパッチ4.1で実装された「失われた都 ラバナスタ」になります。 FFTFF12が好きな方ならTwitterなどで聞いたことがあるかもしれません。それです。 つまり、実装されたばかりの鳴り物入りコンテンツでバグが既に利用されており、通報もされていました。しかも投稿文の詳細部分にあるとおり、実装から数日後の10月15日と16日に報告されていたとのことです。とはいっても世界的にクリア速度を競うコンテンツでもありませんし、悪い言い方にはなりますがさほど影響はなかったと思われます。 が、同月実装の「パッチ4.11」では、その世界的にクリア速度を競うコンテンツ(という位置づけも持っている)「絶バハムート討滅戦」も実装されています。多くのプレイヤーは、この「絶バハムート討滅戦」での悪用を気にしていたかと思います。なおこの「絶バハムート討滅戦」を最初に踏破したのは日本のチームです。

当該プレイヤーはその後、別の不正ツール使用が発覚し永久アカウント停止の対応が行われる

これはちょっとクスッと来るポイントかつ、あとの詳細説明にも効いてきますが、通報されたあと当該プレイヤーは間違いなく監視されており、監視のキモであった「不正ツールの使用有無」で後々にクロとなっています。こうなると、先に報告があったバグについても実は不正ツールだったのでは…と人間なら考えそうです(実際にそう思ったかどうかはあくまでも想像ですが)。バイアスかかるもんだし仕方ない。 とまあこんな感じで、通報も数件されている状況で、「絶バハムート討滅戦」以降、「パッチ4.2※2018年1月実装」で新しい高難易度コンテンツ「次元の狭間オメガ零式:シグマ編」が実装されたあとですら結果的に見過ごしとなってしまった原因などは、投稿文に記載のとおりです。

2018年2月27日(日本時間)以降の流れですが、これめちゃくちゃ早いです。 バグが大きく広まる発端となったRedditの投稿ですが、これを取り上げた日本語のサイトの記事がありました。 私はそのサイトのTwitter(主に更新通知をするもの)をフォローしており、リアルタイムで拡散の様子や試しに使った他プレイヤーの動画などが流れてくるのを見ていました。本当に当日の夜にわっと盛り上がった感じです。 が、先述した「絶バハムート討滅戦」も当然この時期であっても攻略できます。放っておけばプレイヤー感情の悪化、今後追加されるコンテンツなどに悪影響が出ることは間違いありません。

それと、投稿文を見るとバグの再現手順が簡単なことと、詳細の説明を参考にすると、特定コマンドを受付ないようサーバー側の調整だけをおこなえばいいことがわかります(それ以外もあるかもだけど)。 というわけで(?)、27日の夜、つまりバグの件で一番盛り上がっているタイミングで公式Twitterでの告知後、比較的すぐにメンテナンスが開始されました。普段だとバグなのはわかるけど原因がわからなくて調査に時間がかかったりするものですが…。 ちなみにメンテナンス開始時間ですが、日本の16時はヨーロッパだと同日午前7時前後、北米だと同日午前2時前後となり、北米が一番影響ありそうですが、これ以外の時間帯は対応が遅すぎるまたは、ピークの時間帯に遊んでいるユーザーがプレイできなくなると想像できます。

この24時間を遅くない?とかいうびっくりする反応もありますが、FF14は日米欧(韓国もありますが別会社がサービス提供&アップデート速度も違うため本件とは無関係)で展開されており、今回のバグは日欧米の全サーバーで発生しているため、公平性や一律で修正するといった目線で見ると全サーバーを一斉に閉じる以外の選択肢はないと思われます。

冒頭部分(顛末まとめ)についてはここまで。以下詳細についての補足と感想です。

再発防止策・バグが結果的に放置されてしまった原因と今後の対策、バグ利用者の詳細(情報拡散の前後とその人数など)、具体的かつ詳細に記載されています。 顛末のまとめに加えて「絶バハムート討滅戦」「次元の狭間オメガ零式:シグマ編」で悪用されたか、バグの利用者に処遇についての計2点を追記すれば、ユーザーへの報告は十分かと個人的には思います。 それだけにとどまらず、各チームの動きや体制の仕組みなどを隠さずに公開することで、経緯や現在状況について納得感が生まれ、今後の対策についてもしっかりやっていくことが伝わってきます。同時にめちゃくちゃ大変だろうな…というのもわかり、似た職業をしている身としてはつらみが深い感じになりました。

外部サイトではありますが、「4か月前に報告したのに」というプレイヤーの方からの書き込みがあり、この事実関係をいただいている全通報履歴と内容、またそれに付随する調査のログデータ洗い出しを行いました。

今回は前述した、「4カ月に報告を行った」という書き込みを元に、修正メンテナンスが行われた時点から、パッチ4.1リリースまで遡り、調査のために記録してあるプレイヤーの皆さんの全バトルログデータの調査を行いました。

これはつまり、おそらくほぼ全てのログを直近4ヶ月は保持しているということになり、ある意味バグ・不正利用への牽制にもなっています。実際のところサービス開始時から保持していそうですが謎です。

プレイヤーの皆さんの公平性や、ゲーム内経済の安定性、サーバーの処理を破壊する行為を数多く摘発し、健全な運営に努めてきたSTFですが、今回はその意識が裏目に出てしまうこととなってしまいました。

役割の違いで視点が違うのは当然とはいえ、あらゆる可能性を考慮しないといけないという意味では役割の切り分けはめちゃくちゃ危険です。が、ある程度切り分けないとタスク量が半端ないことになってしまいます。その点についても担当者を分散するといった対策をとることがきちんと書かれています。 それに、どんなステータスであっても一度は各チームに共有される仕組みだと、あたたかみのある運用にはなりますがおかしな点に気付く人は大幅に増えそうです。

■意図的な不具合を利用したコンテンツ攻略とペナルティについて■

好奇心や興味本位での利用者に対する対応も妥当だと思います。ちょっと試したい気持ちというのは無視できないが、気軽にバグを利用する行為は看過できるものではないためメールでの注意喚起をしっかりやり、本当に悪用していたプレイヤーにたいしてはきっちり処分をしており、情報拡散後に繰り返し利用していたプレイヤーも別扱いとしているなど、本件に対して細やかに・適切に対応しているということがわかります。


最近、ソシャゲ・ネトゲの不具合報告などで対応や経過の説明が比較的詳細にされていることが増えてきているように思います。 成功事例は生存者バイアスやその時の状況・時期の違いで、面白いとは思っても実際のところ参考にならないパターンが大体ではないか?と個人的に思っています。 逆に失敗事例の共有、特に今回紹介したような詳細なものについては他業種でも別の作業や事象に当てはめやすい・想像しやすいかな~と。

また、今回の不具合に関わらず、FF14は仕様やUIについての説明が時折異常なレベルで丁寧なことがあります。 直近だと、プレイヤーの所持品に関するアップデートで、「仕様上どうしてもそうせざるを得ない」類のものについて説明がされていました。 他にも、要望が出た当時はできないよそんなの~と言っていたものが、時期をおいて実装されたり技術面やUX提供の面で注目するポイントがアップデートのタイミングでたまに出てきます。 単純にゲーム(と一緒にやっているプレイヤー)が面白いのもありますが、こういった運営側の動きから学びを得ることが多いこともFF14が好きな理由なのだなあと再認識したのでありました。

なお、そんなFF14ですがこの記事を書いている時点での最新アップデートにて、ネットゲーム老人が喜びそうなコンテンツが実装されました。 ノートリアスモンスター、狩場、デスペナルティなどの単語にピンと来た方はぜひご確認ください。 エルダーウィローをひたすら殴っていた、青春の思い出が蘇りました。すぐ封印しました。が、シグマ編零式の攻略が終わっていて基本これしかやることがないので逃げられません。現場からは以上です。